第3回「ポノリポ子ども物語大賞」受賞者発表 |
![]() -第3回ポノリポ子ども物語大賞 総評- 2024年5月に公募を開始し、10月末に募集を締め切りました「第3回ポノリポ子ども物語大賞」には、合計52作品の応募がありました。「ポノリポ子ども物語大賞」は、小学生を対象とした創作物語の公募コンクールです。拙書「小学生のための物語創作ワークブック」をジャムハウスより出版する時に「この本を楽しんでくれた子ども達が物語を創作し、その作品を送るコンクールを」という主旨で、2022年度から始まった小さな手作りのコンクールです。 本が好きで物語を作ることが大好きな子ども達が、集まってワイワイ楽しく語らうような、そんな場を作れたらということで、出版元のジャムハウスと小高が代表を務めるPonoLipoが、一緒に始めたものです。 3回目となる今回、高学年の応募の割合が多く、作品で描かれる世界も、ファンタジックなものからSFやサスペンス、リアルなドラマなど、幅広く多彩な作品が集まりました。各賞の選考は、ゲームデザイナーの大山功一さん、児童文学作家の金治直美さん、ジャムハウス代表池田利夫、PonoLipo代表小高美保の4名で行いました。 最終選考に残った10作品を4人の審査員が読み込み、討議を重ね、5年生の向仲美結さん「ふしぎなとびら」が金賞に、6年楠本理人さん「佐々木の一日」と6年生吉田愛来さん「6才の谷病院」の2作品が銀賞に、2年生まつもとせいごさん「キツネくんのゆうびんポスト」、3年生加藤葵さん「タカじいの千年」、6年生相羽駿斗さん「10日目に死んでしまう猫」の3作品が銅賞に選ばれました。
今回は、リアルな大人の世界を描くドラマ作品が目立ち、前回ファンタジー世界を舞台にした作品が多かったのに比べ、書き手の子ども達の気持ちが、いよいよ世界に開かれリアルな社会に向かい能動的に動き出した印象を持ちました。外へ向かう流れを反映してか、前回より応募作品数はやや少なめでしたが、主人公が能動的に行動し、成長していく冒険の物語になっているものが目立ちました。何より作者が楽しんで書いているものが、読み手の感動に繋がり高く評価される結果となりました。 文章全体の運びに勢いとスピード感がある作品と、かっちりと美しく構成された物語の構築力に抜きん出た作品が、最終選考で金賞選考を競うことになったのも、非常に興味深かく思いました。最終選考に残った作品は、どれも、その書き手それぞれの個性とこだわりが強く反映され、それぞれの作風を感じさせる出来栄えに、読者となった審査員全員が興奮し議論も白熱しました。 金賞受賞の向仲美結さん「ふしぎなとびら」は、その完璧な物語の構成力と、等身大の世界を舞台にして、細部をつぶさに丁寧に描いている、しっかりとした文章力で抜きん出ていました。美しく組み上がり過ぎて予定調和的な感じがするという完全性が課題として指摘されるほど、完成度の高い作品で、最終的に金賞に選ばれました。 銀賞受賞の楠本理人さん「佐々木の一日」は、そのスピード感と次々に展開するおもしろいエピソードの連続で、何より作者がノって書いているグルーブ感というか疾走感が、読み手を夢中にさせる勢いがある作品でした。最後のオチを思いつかなかったという後書きを受けて、作者も認める作品の不完全性をどう評価するかが、最後まで議論された作品でした。最終的に、今回は作者が自分で不完全と認めて後書きを残したことを重く受け止め、しかしながら、その将来性が非常に高く評価され銀賞に選ばれました。 銀賞を受賞したもう一つの作品、吉田愛来さん「6才の谷病院」は、病院の建物と隣に新しく建ったビルが擬人化され主人公として表現された独創的な着想の作品です。着想の奇抜さと裏腹に、とてもハートウォームな優しい物語も好感を持たれ銀賞に選ばれました。 銅賞受賞のまつもとせいごさん「キツネくんのゆうびんポスト」は、作為なく素直に描かれた物語です。作品世界の住人であるいろいろな動物に名前をつけてイキイキと面白いキャラクターを創造していくプロセスを、作者が夢中になって楽しんでいることが、読み手に伝わり、スッとその楽しく朗らかな作品世界に誘われる魅力がある作品でした。 同じく銅賞受賞の加藤葵さん「タカじいの千年」は、荒唐無稽でファンタジックな世界を舞台にしながら、しっかりと年配者と年少者の絆が描かれており、読み応えのある作品に仕上がっていることが評価されました。 銅賞受賞3人目の相羽駿斗さん「10日目に死んでしまう猫」は、ゲーム的な世界観を持ち、シナリオ風の書き方で表現された作品でした。ゾンビを倒していく経過を10日間の時間経過の中で断片的に描いていくスタイルは、まさに今を生きる新世代の感覚でした。その斬新さについては賛否が分かれましたが、作品全体に漂う無常感というか、サイバーパンクな感性は、読み手に鮮烈な印象を残し、最終的に銅賞に選ばれました。 次回の「第4回ポノリポ子ども物語大賞」は、2025年5月頃公募を開始する予定です。今回以上にインターネットや書店・図書館などでの広報活動に力を入れ、公募に力を入れていきます。たくさんの子ども達が、自分の想像の世界の中で生きて活躍する、そんな物語がたくさん集まると嬉しいなと、今から審査員一同ワクワク楽しみにしています。 株式会社PonoLipo 代表 小高美保 |
【審査員】 |